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第9話 正義の騎士が先に抜いた剣

مؤلف: なつめ
last update تاريخ النشر: 2026-08-06 23:25:22

 毒物が検出されたという報告のあと、生徒会室の空気は目に見えない糸で締め上げられたように張りつめた。

 侍従は扉の前で片膝をつき、顔を伏せたまま続ける。

「東棟の花壇で作業をしていた庭師が、手指の痺れと皮膚の変色を訴えました。医務室のユディト医師が処置し、現在は命に別状ございません。花壇の土と、付近に落ちていた紅茶から同一の薬物反応が確認されています」

「なぜ、リディエラの名が挙がった」

「薬物が落ちたと見られる時刻、花壇を見下ろす喫茶席にいたためです。同席していたのは、ネレス・カルヴァディン留学生。給仕役と複数の生徒が、二人を目撃しております」

「薬を落とした瞬間を見た者は」

「現時点では、確認されておりません」

 まただった。

 音を聞いた。姿を見た。その場にいた。

 そして、肝心の瞬間を見た者はいない。

 リディエラは椅子へ座ったまま、包帯を巻いた左手を膝の上へ戻した。先ほどティルヴァンへ渡された行動制限の書面が、卓の端で風に揺れている。

 毒を入れたのはネレスだ。だが証明できるものはない。白い杯の雫はユディトが封じ、指輪の針も袖の小瓶も、彼がまだ持っているとは限らない。

「リ
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  • 死亡率99%の悪役令嬢ですが、好感度50を外すと全員が壊れます   第23話 王子の涙を売る商人

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  • 死亡率99%の悪役令嬢ですが、好感度50を外すと全員が壊れます   第22話 涙を見せない王子

     旧王妃庭園へ向かうまで、まだ数時間あった。 黒いミッションは、視界の隅で時間を削り続けている。〈残り時間:69時間14分08秒〉 リディエラは表示を閉じた。 焦れば、傷つく言葉を探し、過去を暴き、泣くまで追い詰める方へ傾く。それをしないと決めたのなら、まず知るべきは「どうすれば泣くか」ではなく、「なぜ泣かないのか」だった。 王立アルセリア学院の中央資料棟には、王家に関する公刊記録も保存されている。 王太子の生い立ちそのものは秘密ではない。 むしろ、王位を継ぐ者の歩みとして積極的に残されていた。 リディエラは司書へ申請し、宮廷年報、王都新聞の縮刷版、学院行事記録を閲覧机へ運んでもらった。 高い窓から射し込む朝の光。 遠くで頁をめくる乾いた音。 黒い革表紙の宮廷年報を開く。 最初に出てきたのは、六歳のティルヴァンだった。 公式晩餐へ初めて出席した日の記録。〈王太子殿下は幼少ながら終始ご立派な態度を保たれ、諸侯の挨拶へ一人ずつお応えになった〉 添えられた記録画には、小さな白金の髪の少年がいる。 大人用の椅子へ座れば足が床へ届かないほど幼い。 それでも背筋を真っ直ぐ伸ばし、膝の上へ両手を置き、正面を見ている。 笑っていない。 怯えてもいない。 子どもらしい退屈さすら見えない。 次は八歳。 外国使節団を迎えた時の記録だった。〈殿下は使節の母国語による挨拶を披露され、両国友好の象徴として大きな称賛を受けられた〉 写真のティルヴァンは、やはり同じ顔をしている。 唇の角度まで整っているように見えた。 十歳。 王太子として初めて民衆の前で短い演説を行った。〈未来の王としての責任をすでに深く理解しておられる〉 どの記録も褒めている。 泣かなかった。 取り乱さなかった。 怯えなかった。 失敗しなかった。 そのすべてが、美徳として同じ方向へ積まれていた。 リディエラは紙の余白へ簡単に書き留める。 六歳――公式晩餐。 八歳――外国使節。 十歳――初演説。 すべて「落ち着いていた」「立派だった」「年齢以上」と評価。 子どもらしい感情が記録されていない。 羽根筆を止める。 記録にないことと、存在しなかったことは違う。それでも、周囲が何を価値あるものとして残したかは分かる。 感情を抑えられる王子。 乱れない

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